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「Sora 2」問題共同声明の焦点
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主要な出版各社や関連団体が、OpenAIの動画生成AI「Sora 2」に対する共同声明を出した。Sora 2の著作権問題については当初からITmedia AI+でも触れていたよういに軽微な問題とは言えず、IPホルダーが声を上げるのは至極当然であるようには思う。
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集英社のみ単独声明を出したが、主張は概ね同じ。集英社は作家の心情に重きを置いた言い回しになっていて、共同声明は法的権利や条約といった客観的ルールに重きを置いた言い回しになっている。
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重みが違ってもコアとなる主張の一部は「生成AIであろうとなかろうと権利侵害には適切に対応する」「オプトアウト(権利者が申し出ない限り除外されない)方式では原則として権利侵害につながる」「オプトインになるとして、許諾したなら権利者に適正な対価還元を」──といったところ。この辺は筆者も完全に同意見だ。
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どうか、という部分を強いて挙げるならば、共同声明にある「学習段階(中略)において(中略)権利者に必要な許諾を取る等の対応をAI事業者が取る」「学習データの透明性が担保されている」(ことを求める)──の箇所。
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AI+読者には釈迦に説法と思うが、AIにおける学習とは「データを使って重みを調整すること」であってAIモデルにその元データを内包することではないし、AIの利用段階で(第三者が権利を持つような)データを入力することでもない。
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もっとも、共同声明の書き方を見てもこのあたりははっきりと理解した上で主張していることが分かるが、少なくとも日本において、AIの学習に際して著作権に制限規定があるのは必ず言及されてきた部分だ。にもかかわらずここを求めていくのはかなりハードなコミュニケーションが必要になるのではないだろうか。
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学習データの透明性担保も、正直に言って実効性は疑問。もちろん考えを表明することは大事であるし、特に日本国内においては「透明性が担保された学習データで学習しよう」という動きがあることも、筆者は複数筋の情報で承知している。しかし、AI開発においてトップを争っているのは米中という2大強国。AIモデルの苛烈な開発競争の中で、性能向上の足かせになるような要求を受け入れるだろうか。
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落とし所を勝手に想像すると、利用段階における出力フィルタリングとオプトイン、将来的なレベニューシェアというところのような気はするが。いずれにしても、これだけ多くの日本のIP団体が声を上げたことは重要だ。動向を見守りたい。(井上)
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